むかしむかし、ある山おくのほらあなに、ぐひんさんがすんでいました。
ぐひんさんとは、テングのことです。
このぐひんさんのうらないは、とてもよくあたるとひょうばんでした。
そこで、おなじころに子どもが生まれることになった木兵衛(もくへいえい)と太郎兵衛(たろうへいえい)は、はるばるぐひんさんをたずねて、子どもの運をみてもらうことにしました。
ぐひんさんは、大声でじゅもんをとなえると、やがて木兵衛にいいました。
「神さまのおおせられるには。木兵衛、おまえのとこには、竹三本のぶにの子が生まれる」
「竹三本のぶに?」
「そうじゃあ、人には生まれながらにそなわった運命がある。それすなわち、ぶにじゃ」
「というと、おらの子は、たったの竹三本しかそなわらんのか?」
ぐひんさんは、こんどは太郎兵衛にいいました。
「太郎兵衛、おまえのところには、長者(ちょうじゃ)のぶにの子が生まれる。長者になるさだめじゃあ」
「・・・長者ねえ」
ぐひんさんのうらないを聞いて、二人は山道を帰っていきました。
それからしばらくして、二人の家に子どもが生まれました。
「たまのような男の子じゃ」
「うちは女の子じゃ」
どちらも元気な子で、二人は手をとりあってよろこびました。
ある日のこと、木兵衛と太郎兵衛が畑仕事をしているところへ、吾作とおかよがきて、
「おとう、昼めしじゃあ」
「みんなでいっしょに食べようよ」
あぜ道で、四人そろってにぎりめしを食べました。
と、いう太郎兵衛に、おかよはニッコリ。
ムシャムシャ・・・、ガチン!
木兵衛がかぶりついたにぎりめしに、小さな石が入っていました。
「なんや、石なぞ入れおって。ペっ」